いつか参加したいと思っていた千葉のヴィパッサナー瞑想に参加してきました。結論から言えば、参加して本当に良かったです。悩んでいたことや苦しみに対する答えのピースがそろった感じ。ただ、現状ではまだピースがそろったというだけで、パズルを完成させるにはヴィパッサナー瞑想を続けなければならないという事もわかった合宿でした。ヴィパッサナー瞑想の概要や合宿での生活についてに関しては他のブログ等でも書かれているので、私が合宿で学んだ核心を書きますと、
『苦(ドゥッカ)』を滅する方法を学んだ
という事に尽きます。と言うかそれがヴィパッサナーなので、そのまんまといえばそのまんまなんですが、自分なりに腑に落ちた部分が発見できたのが大きかった。
『スマホ脳』や『ストレス脳』で知られるアンデシュ・ハンセンによれば、私たちの脳は狩猟採集の時代から変わっておらず(400万年前から1万年前の農耕が始まるまでずっと同じような生活だったため)、狩猟採集時代を生き延びるために最適化された脳が現代生活とミスマッチを起こしているために不具合や過度のストレスを生み出しているという事です。種としての生存という観点から、脳は生き延びて子孫を残すために存在しているのであって、私たちを幸せにしてくれるために存在しているのでは無いとのこと。むしろ幸せな感覚に長く浸ろうものなら、死因のほとんどが感染症・飢餓・捕食・他者からの加害であった時代に生き延びることはできない。バナナ一本で満足していたら飢え死にすることが避けられないのです。そのため次なる食料をすぐ追い求めるよう、駆り立てられるようになっている、と。
そんな時代を生き、命をつないできた祖先は、その環境ゆえに皆が超高感度な『火災警報器』をそれぞれの中に持っており、周りの状況の変化に過敏に反応するように適応していて、それが私たちにも受け継がれています。茂みから「ガサッ」と音がしたら全力で逃げなければ生き残れないのです。それが10回のうち9回が風の仕業だったとしても、10回に1回が人類を捕食する動物だったら、そこに立ち尽くしていた人の生はそこで終わってしまう。それが子供が作れる年齢に達する前の人間だったなら、その遺伝子はそこで終了してしまうため、現在地球上にいる人類はみな、些細な刺激にも発報する『火災報知器』を受け継いでいるわけですが、命をつないだこのシステムが現代社会においてはストレスの発生原因となってしまっています。
ブッダが看破したのはまさにそこでした。絶え間なく鳴り響く『火災報知器』に盲目的に・無自覚に・無意識のうちに反応すること(サンカーラを生んでしまう事)こそが『苦(ドゥッカ)』の原因で、それを生まないようにする(新たなサンカーラを発生させない)方法があり、そこに至る道こそがヴィパッサナー瞑想なんだと。それがヴィパッサナー瞑想の核心たる、
感覚への気づきと平静さ
という事が合宿を通してしっかりと理解できたのが本当に大きな収穫でした。人のどのようにサンカーラ(反応)を発生するのか、ブッダは下記のように分析しています。
- 体や心が何かに接触すると感覚が起こる
- 自分にとって良い感覚には渇望のサンカーラ(反応)を生み、悪い感覚には嫌悪のサンカーラ(反応)を生む
- 渇望のサンカーラには執着をし、嫌悪のサンカーラには怒りや不快感を抱く
- 1に戻る
これを延々繰り返すのがサンカーラ(反応)に無自覚な人生であり、ブッタはヴィパッサナー(ありのままの観察)を通してサンカーラを生む前の段階、つまり感覚をありのままに観察することによって、それをいかなる渇望や嫌悪のサンカーラにも結びつけず、ただ観察して、あらゆる感覚の本質、『生まれ・消え去る』(アニッチャー)への直接的経験に基づく知恵(パンニャー)から新たなサンカーラ(反応)を発生させず、また古いサンカーラもアニッチャー(無常)の正しい理解から、いずれ滅するという道を提示しました。
いや、なんと合理的な理論。そして信じ難いその慧眼。現代の進化論や脳神経に関する本を最近、何冊か読みましたが、現代科学の解き明かした地平に2500年前の人間が自己への洞察のみで到達していたことに本当に驚かされます。ブッダ曰く、人は夢の中を生きていると言ったようですが、現代の脳科学的にはまさにその通りで、私たちは脳の作りだす想像の世界を生きているらしいです。想像の中を生きているから、その想像と現実にギャップがあったらすぐに気づけて危機を感じることができると。何でそんなことに気づけるんでしょうか。まったく意味が分からん。。。
そんなわけで、詳細を省いて専門用語の説明もせずに書いてしまったわけですが、そんなことを合宿で学んできました。『苦(ドゥッカ)』を滅するには、生命の生存法則に真っ向から対立するような方法を取らなければならないわけで(ただ1時間、感覚の観察をするために坐り続けるなんて自己の生存にとってマイナスしかないですからね)、つまりは精進しなければならないわけです。瞑想前の説明で繰り返し繰り返し、何度も何度も言われるので合宿に参加した方にはわかると思いますが、
『忍耐強く・粘り強く/忍耐強く・粘り強く 懸命に働きましょう/一所懸命に働き続けましょう』
ただただ忍耐とともに瞑想を続けることが必要なようです。日常においても感覚を観察して、怒りや嫌悪、失望や嫉妬、また感動や喜びもサンカーラと結び付けることなく、すべては『生まれ・消え去る』というアニッチャー(無常)の理解とともに観察し続ける事。これが私が合宿において学んだ、最初に書いたパズルにピースです。これを完成させるにはヴィパッサナーを続けて真のパンニャー(知恵)に到達するしかない。
合宿で学ぶことですが、ブッダは知恵を三種類に分けています。それは
- スタ・マヤー・パンニャー(知識)
- チンター・マヤー・パンニャー(理解)
- バーヴァナー・マヤー・パンニャー(直接的な自分の経験に基づく知恵)
です。そして2の頭で理解した段階では新たなサンカーラが生まれなくなることはなく、3の直接的な自分の経験に基づく知恵を持って初めてサンカーラが生まれなくなる、と。つまりは精進するしかない訳です。感覚への気づきと平静さと共に。
本当に素晴らしい経験でした。参加するには相応の覚悟と決意が必要ですが、最終日まで乗り切った人の中には後悔している人はいなそうでした。私は合宿中、毎日参加したことを後悔していましたが(笑)。
合宿中、困ったことはほとんどありませんでしたが、私の経験から2点言わせてもらうと
- 常用している風邪薬・胃腸薬があるなら持って行った方がいい(私は疲労からおなかを壊しました)
- アレルギーを持っている人はアレルギーの時期は避けた方がいい(最初に呼吸の瞑想をしますが、花粉症の方だとまったく集中できないと思われるため)
もしこの文章を読んで参加を決めた方がいらっしゃるなら、心より健闘を願っております!素晴らしい経験になりますように!私もそれまで瞑想を続けておりますので、一緒に忍耐強く・粘り強く/忍耐強く・粘り強く 懸命に働きましょう/一所懸命に働き続けましょう!!!
アニッチャ!
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