軽井沢現代美術館 津上みゆき展

アート

 現在開催中の『軽井沢現代美術館 津上みゆき展』に行ってきました。展示している作品数は多くはありませんでしたが、なかなか観る機会の無いスケッチの展示もあり、また美術館ですが作品の購入もできるようになっていて、とても良かったです。作品を購入したことがある人ならわかると思いますが、作品を購入するとなると、それをどこに飾るのか/もしくは保管するのか、それは自分の持っているコレクションの中でどういった位置づけになるのか、将来的にコレクションの中に残り続ける強度があるのか等々、作品をただ眺めているだけだったら気づけない微細な部分にまで目が行き届くようになります。美術に普段あまり馴染みのない人だったら、展示作品から1点購入して自宅に飾らなければならないという前提で鑑賞すると(金額はさておき)、それをどう飾ろうとか、どういった観点から購入したいと思ったんだろうとか、その作品とどう関わっていきたいだとか、作品へのアプローチの仕方が増えて、より多角的に作品が見られるようになるかと思います。

展覧会風景

 津上みゆきさんは1973年生まれ、京都造形芸術大学を卒業後、2003年に若手作家の登竜門といわれているVOCA展で最優秀賞を獲得。特徴的なのは一見すると抽象画に見えるその作品を、本人は決して抽象画とは言わず、『風景画』であるとしているところ。実際、津上さんの作品は実際の風景を基にしたスケッチをベースに、エスキースを重ねて作品を作っているようです。

スケッチの展示風景

 手前にあるスケッチが基になっていると思われる作品がこちら。

作品展示風景

 一番右の作品が上記スケッチから制作された作品かと思います。津上さんの作品としては比較的珍しい街中の一風景を描いているようで、水平・垂直のラインが見えます。画面右側には黄色の淡い色調、左は建物の陰になっているのか、かなり深みのある青で塗られていて、その対比が美しい。

《View,a mangnolia tree,11:10am 6 March 2020》

 今回の展示で最も気に入った作品。作品名から3月の風景の様です。画面中央から右上にかけてはコバルトやターコイズのような鮮烈な青が印象的で、左側は暖色が多くなっています。

風景から瞬間的に感じたことを絵にするのではなく、風景を絵画表現に結びつけるための段階を踏むことで、わたしの作品になると思うんです。

アネモメトリ

 津上さんは2016年のインタビューでこのように答えています。その時間、その季節、その場所でしかありえない光や風、においが津上さんというフィルターを通すことによって混ざり合い・溶け合って重層的で極めて魅力的な画面になるのかと思います。

 以前お話を伺ったとき、作品を制作する際に腕のストロークで方向性ができてしまう、それをなくしたいとおっしゃっていました。津上さんは作品から作者本人も消えて、ただそこにしかない『光・風・におい』の痕跡・またその残滓だけを提示したいのかもしれません。

 作品数は少ないですが素晴らしい展覧会だったので、軽井沢に行った際はぜひ立ち寄った方がいいかと。2023年11月23日まで!

 ではアニッチャ!

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