マティス展と大回顧展に思う事

アート

 東京都美術館でのマティス展行ってきました。マティスらしい軽妙洒脱な色使い、平坦なマチエールの中に感じる奥ゆかしさ、マティスの絵画に度々登場するモチーフである、イスラム的な装飾をまとった布や窓、ストライプといったものも随所に観られて、大変楽しく鑑賞してきました。

 多数の来場者数が見込まれていたからか、近年の展覧会では珍しく、撮影禁止の作品が半数以上を占めていたように思います。実際、人が多すぎて、作品を観るのも人波に乗って、その流れの中で観るような感じで。。。立ち止まって写真なんて撮れる雰囲気ではありませんでした。

 という事で、写真は多少撮ったけど、テキトウ。素晴らしいと思った作品は撮影不可。

 これはかなり軽めな作品ですが、いい作品には一枚の絵の中に時間の違う光を塗り込めたような魂が込められていました。これは比喩ではなく、実際、夕方の差し込んが光と思わしき上に日中の光が重ねられているような作品があり、それがさらに夜になっていたりして、そこが絵画に複雑性と強度を与えていて、時代に淘汰されないスケール感につながっているように感じました。すべての時間や光を一枚の絵画に圧縮したような強度。

 でも重くはなっていない。マティスは自身の作品について、『私は人々を癒す肘掛け椅子のような絵を描きたい』と語っていて、まさにその通りになっていました。スケール感・強度がありながらも軽妙洒脱。この点がマティスをマティスたらしめている部分なのかなと。素晴らしい経験でした。

 で、ここからは美術業界の内情を知らない私の妄想なのですが、今回のマティス展に限らず、大御所の回顧展に関して思ったことを書いていきます。

 確かにいい作品もありましたが、それ以上に何をみせたいのか良く分からない作品が多かったように思います。エスキースの様な作品やスケッチで展覧会のボリュームを稼いでいたようなところが、です。観たい作品は他にありました。

 そんな感想を以前、上野の森美術館で開催されたゴッホ展でも感じたような気がします。ゴッホ展に関しては、ゴッホの作品よりもゴッホ周辺の作家の作品の方が多くて、ゴッホ展と言っていいのコレ?って思った記憶があります。

 国内の作家の展覧会では、あまりそのような感想を抱いたことがありません。間の抜けた展覧会にならず、最初から最後まで一定の密度を保った展示になっています。

 で、ここからは仮定の話なんですが、昔は回顧展を開催した場合にエース級の作品を誘致できたとして、現在では傑作を持ってこれなくなっているんだとしたら、そこにはやはり経済的な理由があるのかなと。

 その前提にたつなら、直近で言えば円安の影響でしょうか。

 長いスパンの話としては、日本経済の衰退という事になるのでしょう。社会保障費の増大と生産年齢人口の減少。文化的な事業に割ける予算も必然的に少なくなって、集められる作品のクオリティが下がっていると。傑作に直接触れられない影響は、今の若い人たちにネガティブな影響を与えてしまいかねません。

 そういえば今月、国立科学博物館も資金不足でクラウドファンディングをしてましたね。いったんは資金が集まったようですが、それが持続可能なものなのか、もしくは今後の日本に合わせてダウンサイジングが必要なものなのか、そのあり方が問われているのかと思います。

 もう一つ考えたのは、日本経済衰退の別の一面で、国内の話ではなく、海外との比較したとき、今まで文化的な事業に予算が割けなかった国が成長して、アートに資金を投入できるようになったのかなと。傑作と呼ばれている作品の数は限られているので、それを世界中で取り合えば、当然、割り当てられる作品も減少するでしょう。世界中でどの程度、同時期に回顧展が開催されているのかは知りませんが。もしかしたらお互い足を引っ張り合わないように、なんとなーく時期が被らないような調整が見えざる手によってなされているのかもしれません。分かんないけど。

 ただ、今までアートにお金を投入できなかった国がそこに資金を投下できるようになったなら、それは喜ばしい状況ですね。今までアートの世界になかった文化的背景を持つ、新たなアートが世界の市場に参入してくる可能性に繋がるわけだから。裾野が広がれば、そのぶん高さも増すことでしょう。

 アート作品についてそんなことをなんとなく考えましたけど、私の趣味の一つであるワインも状況はまったく一緒です。特に高級ワインに関しては生産量を増やすことが難しいにも関わらず、今までワインを購入することが難しかった国や個人が豊かになることによって、ワインを買えるようになり、少ない数のパイを奪い合いで価格が高騰している状況です。しかし、それに関してもやっぱりアートと同じく良い面があり、ワインの文化が広がることによって、新たな産地が開拓され、今までになかった銘醸地が生まれています。私は飲んだことはありませんが、中国でも素晴らしいワインが産出されているようです。世界のソムリエ選手権にインドのワインが出題されたりもしています。好きなものが広がっていくのは、単純にうれしいです。

 そんなことをマティス展に行ってみて思いましたとさ。

 それではアニッチャ!!!

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