アーティゾン美術館『アートを楽しむ』展

アート

 初アーティゾン美術館。ダムタイプ目当てで行きましたが、同時開催の『アートを楽しむ』展が素晴らしすぎて、ダムタイプが霞んでしまいました。ということで『アートを楽しむ』展です。

 とにかく傑作揃いでしたが、特にマティスが素晴らしかった。

アンリ・マティス《縞ジャケット》1914年

 マティスといえばフォービズムのイメージしかなかったので、こんなにも力が抜けていてポップで洗練された作品もあるんだと。目にした瞬間、LOVEずっきゅんです。ローラ・オーウェンスや落合多武にも通じるような現代的な詩情性や軽やかな孤独感。フォービズムとは対極にあるような淡い色彩、マチエール。背景の塗り方はマティスのそれですが、それでも筆跡が抑えられていて私のイメージしていたものと違いました。

落合多武《Tale tail 2》

 ん~、並べてみても現代の作家とポップさで遜色ない。。。

 ほかに一点、風景画もありましたが、それも素晴らしかった。

アンリ・マティス《コリウール》1905年

 画面中央から上部、特に右上の空に関してはかなり厚塗りされていますが、左下に行くにしたがってかなりの薄塗になり、キャンバス地が見えているところもあります。今回展示されていた作品は結構な割合でキャンバス地が見えている部分がありました。1枚の絵画の中に色彩やマチエールの多様性があり、色彩と余白が鑑賞者の想像を駆り立てるような、具象と抽象を行きできるような、現代的な解釈にも耐えうる強度を持つ傑作揃い。恐るべし石橋財団。。。

ピエール・ボナール《ヴェルノン付近の風景》1929年

 ボナールの作品。画面左右の木と葉の間の空はあまり色がのっておらず、またその下の川にも余白があり、そこに透明感と川を渡る爽やかな風を感じます。色使いも好きですね。

アルフレッド・シスレー《サン=マメス六月の朝》1884年
アルフレッド・シスレー《サン=マメス六月の朝》1884年 部分

 続いてシスレー。これも枝の間に余白があり、そこに六月の柔らかな光と朝の澄んだ空気感を感じられます。

ポール・セザンヌ《サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール》1904‐06年頃
ポール・セザンヌ《サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール》1904‐06年頃 部分

 セザンヌはかなり塗り込む作家の印象がありましたが、よく描いていたサント=ヴィクトワール山も余白がありました。今回の展覧会は余白に注目してまわって鑑賞してみましたが、すばらしい作家というは強弱の付け方が絶妙ですね。同時期に上野の森美術館の公募展を観にいきましたが、どの作品も描き込みすぎで、ちょっと途中から観るのが辛くなりました。。。画面にメリハリがあることによって主題もよく伝わり、かつ見飽きない画面に仕上がるのかと思います。

クロード・モネ《黄昏・ヴェネツィア》1908年頃

 モネは昔から好きで、この作品も素晴らしかった。これ観てたら涙がこぼれそうになってしまったので、ゆっくり観られませんでした。別に泣いちゃってもいいんですけどね。。。でも恥ずかしいっすね、おっさんだし。

白髪一雄《観音普陀落浄土》1972年

 現代アートから一作品。白髪一雄の作品です。これは足で描いていないのか、絵の具がモリモリ盛れているようなところがなくて、シュッとした端整な作品に仕上がっていました。白髪一雄らしい、生命力溢れる作品。

佐伯祐三《休息(鉄道工夫)》1926年頃 

 ワインで言ったら軽めに仕上げたピノ・ノワールのようなさっぱりした作品ばかり上げましたが、ゴリゴリのマチエールも好きです。もちろん佐伯祐三も大好きです。佐伯らしいタッチは少な目かもしれませんが、腕や足の部分のペインティングナイフの使い方が佐伯のものですね。

ジョルジュ・ルオー《裁判所のキリスト》1935年

 今回、一番ゴリゴリだったのはこのルオーの作品でしょうか。照明の影響でキリストが輝いています。神々しい。。。素晴らしい。。。。。南イタリアの濃厚なワインの様です。

 本展覧会は5月14日まで。ほかの所蔵作品もすばらしそうなので、次回以降の展覧会も必ず行くつもり。

 6月3日からは『ABSTRACTION 抽象絵画の覚醒と展開 セザンヌ、フォーヴィスム、キュビスムから現代へ』という展覧会が始まります。私の大好きな津上みゆきさんの作品も出展されるようなので今から楽しみ!

 ではまた!!!

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